「環境装置における脱臭装置は、下水道施設の中でも、とくに重要な位置を占めています」と前置きし、日東化工機社長の牛込公一郎氏は次のように説明する。 「当社が脱臭装置に取り組んだのは昭和40年代はじめからです。東京オリンピックの前後から下水道施設が本格的に普及し、施設から発生する悪臭が社会問題になってきました。そこで下水処理場に脱臭装置が設けられることになりましたが、覆蓋設備から始まって臭気を導くダクト設備とそれを洗浄処理する脱臭設備のすべてに、当社の耐食性プラスチックが効果的であることが分かったのです。 もともと当社は上水道の給水技術を得意としており、その関係から耐食性能に富んだプラスチック加工の実用技術を蓄積してきました。この技術が採用されたのをきっかけに、下水道事業の将来性を展望し、脱臭装置に本格的に取り組むこととなったのです」 目論見は的中した。今日の同社は、脱臭装置の設計・製作・施工を自社で一貫して行うことのできる数少ない業者として知られ、各地の処理場に脱臭システムを納入している。 ついでながら、同社のカタログから下水処理場などで広く使われている脱臭方式について概観してみよう。 システムとしては、前述の活性炭を使った「乾式脱臭方式」のほか、「湿式・乾式併用脱臭方式」があり、臭気の濃度によって使われ方が違う。 「湿式・乾式併用脱臭方式」とは、臭気ガスを酸やアルカリなどの薬液で洗浄中和させた後、活性炭で吸着脱臭するという仕組み。下水やし尿処理など中濃度から高濃度までの臭気ガスの安定除去に適している。 一言でいえば、あらゆる臭気の発生状況に応じた最適な悪臭除去装置。これが日東化工機の脱臭装置の特徴である。 牛込社長はこう語る。 「当社では、脱臭装置を単体として製造販売するのではなく、設計から維持管理まで一貫したエンジニアリングシステムの提供としてとらえています。そのため臭気ガスの発生場所、処理風量、濃度などを観測・分析し、設計にあたっては最大の除去効率と最低のコストを常に考慮します。メンテナンスについても、安全、清潔、無公害をモットーに、誰でも容易に維持管理ができるよう簡素でシンプルな方式を工夫しています」 最近は、有明清掃工場のように、表面に姿を現さない大規模な下水処理場がめずらしくない。熱海市の下水処理場もそうだ。熱海後楽園ホテルの地下深くに設けられたそれは、「地下の隠れた話題」として業界の評判を呼んだ。それを可能にしたのは日東化工機の技術が一切の悪臭をシャットアウトしたためである。